研究発表を通じて感じたこと
| 固定リンク 投稿者: 機械工学科
みなさん,こんにちは.
材料グリーンプロセス研究室の修士1年生の佐藤匠です.
私は今年度より工学部機械工学科から大学院工学研究科サステイナブル工学専攻へ進学し,セラミックス繊維強化セラミックス複合材料(CMC)の製造プロセスに関する研究を続けています.
私が修士1年生となった今年度2022年度には,研究の内容や成果をまとめて発表する機会がわずか2ヶ月の間に3回もありましたので,その時のことを振り返っていきたいと思います.
1. ECI Santa Fe国際会議:Ceramic Matrix Composites II
まず,2022年11月13日(日)から11月18日(金)にかけて,アメリカ合衆国ニューメキシコ州サンタフェでのCMC国際会議に参加し,ポスター発表を行いました.
11月中旬のサンタフェの朝は氷点下10℃ほど,昼間でも0℃程度ととても寒く,目が覚めると雪が積もっている日もありました.
砂漠の真ん中にあるサンタフェは,夏は暑く冬は寒い典型的な砂漠性気候で,私が訪れた11月中旬はいわば冬の入り口でしたが,外出時にはコートを着込むほどでした.
図 1 朝食会場から見たサンタフェの雪景色
国際学会2日目の夜には,参加者はワインを片手にフランクな雰囲気の中でポスター発表が行われました.
私は「Measurement of exothermic reaction temperature during RMI process」と題して,CMCを製造する反応溶融含浸プロセスにおいて生じるケイ素(Si)と炭素(C)の炭化ケイ素(SiC)生成反応による発熱の測定と,その抑制方法に関する研究成果について発表しました.
初めての研究発表を日本国内ではなく海外で,しかも英語で行うということでとても緊張しました.
図2には外国人研究者に質問され,ドギマギしながらもジェスチャーを交えて何とか説明している私が映っています.
図 2 ポスター発表で悪戦苦闘する筆者
ポスター発表を無事に終えると,他の参加者の発表を聴講したり(もちろん英語なので理解するのがとても大変でした),それ以外の時間はサンタフェの街を散策しました.
アメリカ合衆国内のイリノイ州シカゴとカリフォルニア州サンタモニカを結ぶ総距離およそ4000kmの国道66号線がサンタフェを通っています.
実際に国道66号線を歩き,沿道の風景を見ていると,国道66号線はアメリカの発展を反映した重要で歴史ある国道であると感じました(図3).
図 3 砂漠の中を雄大に走るROUTE 66と沿道の街並み
宿泊したホテルのすぐそばには19世紀後半にネオロマネスク様式で建造された聖フランシス大聖堂がありました(図4).
築約150年を誇るヨーロッパ調の教会では,今でもミサや葬儀が行われているようです.
図 4 ネオロマネスク様式の聖フランシス大聖堂
同じCMCを研究する方たちと英語で議論したり,サンタフェの歴史や文化の一端に触れることができ,思い出に残る,また今後につながるとても良い経験になりました.
2. 大学コンソーシアム八王子学生発表会
次は,12月3日(土),4日(日)に行われた大学コンソーシアム八王子学生発表会に参加しました.
東京工科大学がある八王子地域は,約11万人の学生が学んでいる全国有数規模の学園都市です.
大学コンソーシアム八王子は,この地域特性を活かし,高等教育機関・市民・経済団体・企業・行政などが連携・協働して,魅力ある学園都市にすべく活動しています.
学生発表会は八王子地域の大学・短期大学・高等専門学校25校の高等教育機関に在籍する学生が,行っている研究の成果やフィールドワークのアイデアを紹介する場であり,今年度で14回目の開催となります.
私は「SiC/SiC系セラミックス複合材料の製造方法:RMI法における含浸時の温度上昇の抑制」というタイトルで研究発表を行いました.
サンタフェではセラミックスの研究を行っている専門家の方々へ向けた発表であったのに対して,今回はいろいろな分野の研究を行っている主に学生の前での発表でした.
十分な予備知識のない人へどのように自分の研究を伝えるかに苦労しました.
具体的には,身近にあるものを例に出すことでCMCというマニアックな材料であってもイメージしやすくしたり,図を多く用いて視覚的に理解してもらえるような工夫をしました.
3. サステイナブル工学研究会
最後は,12月17日(土)に開催されたサステイナブル工学研究会での発表です.
サステイナブル工研究会は,昨年度までは大学院フェスティバルという名称で,工学研究科サステイナブル工学専攻での研究活動の面白さを大学院生が学部生のみなさんへ紹介するイベントでした.
今年度からはサステイナブル工学研究会へ改名するとともに,高等専門学校や高校からも参加者を得て,さらにスケールアップした形で開催されました.
この会でも機械・電気電子・応用化学など専門が違う学生が集まっているため,発表の内容や話し方に工夫しながら,大学コンソーシアム八王子学生発表会での経験を活かして,伝わるプレゼンテーションができたと思います.
高校生の興味深い発表もあり,楽しんで議論に加わることができました.
これら3件の研究発表を経験して感じたことは,「継続は力なり」です.
中でもいちばん痛感したのはサンタフェでの国際学会です.
高校生までは毎日英語の授業があり,英語に触れる時間が長かったのですが,大学に入学してからは学部1年生の教養教育4科目以外で英語に親しむ機会がほとんどありません.
中学校・高校の6年間の英語の学習で何とか話せるだろうと思っていたのですが,まったく歯が立たずもどかしい思いをしました.
一方で,準備と発表を重ねるうちに自分が言いたいことをうまく言語化できるようになり,予備知識がない人にも伝わる発表ができるようになってきている実感がわいてきました.
少しずつでも知識や経験を積み上げていくことで力が発揮できるし,逆に積み上げたものを放っておくと気づいた時には崩れていて積み上げ直すのに多大な労力が必要であることを痛感しました.
今年2023年の学修の目標は,「国際学会でもきちんとコミュニケーションできる実践的な英語力を身につける」を掲げて,研究活動に取り組んでいきたいと思います.
CMCの研究はとても刺激的でやりがいがあると感じています.
東京工科大学への進学を考えている高校生の方々や,卒業研究をどうしようか迷っている機械工学科3年生のみなさんはぜひ,日本が世界の名だたる企業や研究所としのぎを削っているCMCの研究開発動向について調べてみて下さい.
材料グリーンプロセス研究室にて互いに切磋琢磨しながら,CMCの研究に取り組める日を楽しみにしています.
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