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セラミックス複合材料センターと私の卒業研究

| 投稿者: 機械工学科

みなさんはじめまして。

私は材料グリーンプロセス研究室に所属している、機械工学科4年生の伊藤正毅です。
私がこれからお話しするのは、東京工科大学片柳研究所のセラミックス複合材料センター(CCMC: The Center for Ceramic Matrix Composites 以下CMCセンター)についてです。
CMCセンターはセラミックス複合材料に関する国内の産官学の連携拠点として、プロジェクト推進や共同研究を行うために設立されました。
航空・宇宙分野をはじめ、発電,自動車など産業界で広く必要とされる超耐熱構造材料であるCMCの開発や研究を行う施設です。

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図1 東京工科大学片柳研究所セラミックス複合材料センター

セラミックスは、最高使用温度が1150℃の耐熱金属であるニッケル(Ni)基超合金よりも高い温度まで性質が変化せず、密度が鉄の半分以下と非常に軽い素材です。
その反面、小さなクラックでもそれが起点となって一気に壊れる(脆性)ため、構造材料として利用するには安全性が十分ではありません。
この課題を解決する材料として、CMCが有望視されています。
直径が約80µmである髪の毛の数分の一程度の細いセラミックス繊維を、セラミックス母材に入れることで強度1を多少犠牲にしてでも、構造を複雑化することで靭性2を増し、強度と靭性のバランスをとります。
つまり、セラミックス繊維はセラミックス母材で発生した亀裂をブロックする役目を担います。
身近なところでは壁土の中に藁を入れた家の壁や、コンクリートの中に鉄筋や砂利を混ぜ込むなどの具体例があります。

 

一口にCMCと言っても、図2のようないくつかの種類に分類されています。

Image003_20200819160101図2 CMCの分類

CMCの実用例として、レーシングカーやスーパーカーのブレーキディスクに応用されている炭素繊維強化炭素複合材料があります。
CMCセンターでは図3にあるように、炭素繊維強化炭素複合材料製のブレーキディスクを自動車へ実装し、実走行に伴う摩耗などの特性評価を行っています。

Image005_20200819160101図3 ブレーキディスクに実用化されているCMC

 

CMCセンターでは、航空機エンジンの新しい構造材料として、主に母材と繊維を炭化ケイ素(SiC)としたCMCを、溶融含浸法(MI:Melt Infiltration)で作る研究しています。
CMCの複合化手法であるMI法では、最初にSiC繊維の表面に窒化ホウ素(BN)やSiCをコーティングします。
次に、SiCと炭素(C)の混合粉末をスラリー3にし、これをSiC繊維の空隙に入り込ませて、プリプレグ4と呼ばれる予備成形体を作製します。
このプリプレグを裁断・接着した後、所定の形状にし、それを高温の炉内で溶融状態のSiを含浸させて、プリプレグ内のCとの反応により母材のSiCを形成します。
MI法の利点は、短時間で緻密なCMCを製造できることです。

私は主にSiC繊維シートを積み重ねて積層体5にした後、形状を保持したままプリプレグを成型して、溶融Siをきれいに含浸させる研究をしています。
具体的には、Si粉末の形状,サイズ,SiCの重量比やスラリーの状態などを変化させた色々な条件で実験を行っています。
このようにして作製したCMCの断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察し、CMC製作条件の最適化を行っています。

今年度は新型コロナウイルスの影響で、例年より短い期間で卒業研究を仕上げなくてはなりません。
そこでは、スケジュール管理を徹底しながら研究をしていくことが重要です。
これは、企業に就職したときの仕事の進め方にも役立ちます。
卒業研究に積極的に取り組み、研究開発の基本的な手法を習得することは、企業での仕事に役立つと考えているので、一日一日を大切にしながら研究を行っています。

来年度には卒業研究を行う大学3年生はもちろん、1,2年生や東京工科大学に興味がある高校生のみなさんの中で、先進複合材料であるCMCに興味がある方は、ぜひ機械工学科の材料グリーンプロセス研究室に所属し、CMCセンターで卒業研究を行うことをおすすめします。

 

 

<補足説明>

*1 致命的な破壊が発生するまでに加えられる力の限界
*2 破壊に対する粘り強さ
*3 液体中に鉱物や粘土などの固体粒子が懸濁している流動体
*4 母材となる物質を繊維に含浸させた中間素材
*5 単一方向のみに繊維が配向した織物を異なる角度で積層したもの

Ud

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