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足跡は地球を救う!その2「CFPの弁明」

| 投稿者: 機械工学科

 みなさん、お久しぶりです。サステイナブルマネジメント研究室芝池です。
 前回は『足跡は地球を救う!』の第一弾としてfootprintに関する全般的なお話をしましたが、今回はその実施例である「〇〇 footprint」の一つめ、CFPについてご紹介したいと思います。

 CFPはCarbon Footprint of Productsの略称ですが、通常は単に「カーボンフットプリント」と呼ばれています。
 その名が示す如く、身の周りのProduct(商品やサービス)のライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス(Greenhouse Gas, GHG)の排出量を二酸化炭素(CO2)に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みなのです。
 つまり、LCA(ライフサイクルアセスメント)の分析結果から地球温暖化への影響の部分を抜き出して数値化し、わかり易く「見える化」された情報だと言えます。

  【出典】(一社)産業環境管理協会

 上の絵がCFPのマークですが、秤のお皿の中に「123 g」とか「45 kg」と表示して商品などに貼り付けたり、カタログやWeb等で消費者に情報を提供したりするのです。
 これは便利!だって腕時計、牛乳、タオル、ビールといった商品がライフサイクル全体でどのくらいのGHG(CO2換算)を排出しているのかが一目でわかりますからね。
 ところで、ここで言う「ライフサイクル」にはProductの使用時も当然含まれます。
 となると、例えばお米だったら炊飯時に必要なエネルギーや水が含まれますし、洗剤であれば販売時に使った箱はもちろん、洗濯機に投入される電力や水も計算に入りますので、思ったより多くのGHGが出ていることに気づくという仕掛けになっています。
 みなさんはLCAをよくご存じですので、これ以上の説明は必要なさそうですが・・・
 でもこのCFP、愛称「カーボンフットプリント」には実は少々問題(というか注意点)があって、本来はきちんとした「弁明」が為されなくてはなりません。
 というのは、上で紹介した秤の中の数字をそのまま受け取っていろんな商品の比較をしてはいけない、という困った制約があるのですね。
 え?それじゃ使い物になんないじゃん・・と思われるかもしれませんが、でもご安心ください、ここで勉強をして正しく理解すれば立派に使えますから。

 ではその問題(というか注意点)を簡単にご説明しましょう。
 これはLCAの結果を比較する場合の非常に重要な規則なのですが、比較する対象は全て同一の「システム境界」で調査し、同一の方法論で比較し、同一の「機能単位」で評価しなければいけないという点です。
 ここで、「システム境界」とはLCAで調査するプロセスの範囲、「機能単位」とはProductの性能を表す定量化された参照単位(Productから得られる便益の量)を意味します。
 なんだか余計難しくなって混乱してきた方もおられるかもしれませんが、要するに、比較するモノ同士の物差しをそろえてください、ということなのです。
 よくある間違いにLED電球と昔ながらの白熱電球との比較事例があります。
 白熱電球と比べるとLED電球は発光効率が10倍程度高いので断然省エネである、というのはもはや常識だと思いますが、ではこの2種類の電球のCFPはどちらが大きいかというと、普通に計算すれば答えは意外や意外、LED電球になってしまいます。
 しかし、効率がいいのにGHGをたくさん排出しているなんて絶対に変ですよね。
 そう、ここにCFPの落とし穴があるのですが、CFPはライフサイクル全体で計算するために、LED電球が白熱電球より20倍以上も寿命が長いので使用時の効率が10倍程度良くても1個あたりの総電力消費量は大きくなってしまう、というのがその原因です。
 いやはや、比較の規則で示した「機能単位」が正しく設定されていなかったために生じる、何とも理不尽な結果と言わざるを得ません。
 うーむ、これは確かに重要な問題(というか注意点)ですよね。

 じゃあ、こんな場合はどうすれば比較できるのでしょうか?
 「機能単位」を正しく設定するって、一体どうすればいいのでしょう?
 それは・・・LED電球と白熱電球から得られる便益の量を同じにすればいいわけですから・・・そうです!比較する際に両者の寿命の違いを考慮すればいいのです!
 LED電球は白熱電球の20倍以上もの期間「明るい状態」を私達に与えてくれます。
 ならば、CFPを比べる時はLED電球1個に対して白熱電球は20個以上必要になると考えるのが合理的ではないでしょうか。
 そうすれば絶対LED電球の方がCFPの値が小さくなりますから、ひと安心ですね。
 このように、CFPはとても便利な指標ですが、ちゃんと計算の方法や前提条件を理解しておかないととんでもない誤解を与えてしまう危険性があるというお話でした。
 みなさんも店頭やWebでさっきのマークを見かけたら、ぜひCFPの計算方法や前提条件(正確にはProduct Category Ruleといいます)を確かめるようにしてください。

 というところで本シリーズの第2回目を終わります。
 次回はCFPの兄弟分ともいうべき「ウォーターフットプリント」についてお話しする予定でおりますので、乞うご期待。

【注】上記の記事についてさらに詳しく知りたい方に朗報! 4月にコロナ社から『サステイナブル工学基礎』という本が出版されましたので、一度読んでみるといいかも(これはまたしても宣伝です・・)。

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