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Sustainabilityの密室に君は何を発見するだろうか【感動の最終回】

| 投稿者: 機械工学科

 みなさん、こんにちは。サステイナブルマネジメント研究室芝池です。
 途中にお休みが入りましたが、前回の宿題は「Sustainability におけるLife Cycle Thinking(ライフサイクル思考)以外のもう一つのLCTとは?」でしたね。
密室解明のポイントがLock(鍵)、Construction(建物)、Time(時間)だとすれば、Sustainabilityの進展にとって重要なL、C、Tは何か考えてみよう、というわけです。
 サステイナブル工学の目標はサステイナブル社会の実現への貢献であり、サステイナブル社会とは3つのP(Planet、People、Prosperity)がバランスよく進化し、持続的に発展していく社会である、とこれまで説明してきました。
 それでは、この3つのPに関連するL、C、Tを考えていきましょう。

 まずはPlanet(惑星 ⇒ 地球環境 ⇒ 環境との調和)です。
私たちの活動は、それがどのようなものであっても必ず地球環境に何らかの影響、それも大抵は悪い影響を与えてしまいます。
したがって、環境との調和を図るためにはこの影響の把握が不可欠であり、その際に活躍するツールがLCA(Life Cycle Assessment)でした。
ではLCAで何を定量化して分析・評価を行うのかと言えば、もちろん製品やサービスのライフサイクル全体における環境負荷(Environmental Load)です。
温室効果ガス、オゾン層破壊物質、大気や土壌の汚染物質等の排出量に加え、資源やエネルギーの消費量、森林の破壊面積、といった地球環境に対する様々な負荷(Load)の大小を正確に知らないと、環境への影響(Environmental Impact)は評価できません。
 Sustainabilityの最大化をめざすには、対象となる製品やサービスの技術内容を多面的に分析して、環境影響の最小化を徹底的に検討しなければならないのです。
もうおわかりですね、LCTのLはこのLoadで決まりです。

 次なるPはPeople(人々 ⇒ 私たちのくらし ⇒ 生活の質の向上)、そしてProsperity(繁栄 ⇒ 社会の繁栄 ⇒ 経済の活性化)です。
 なぜ2つのPを一緒に扱うのかと言うと、実は2つのPには共通する項目があるからなのであって、手を抜いているわけではありませんよ。
では何が共通するのかといえば、ここはシンプルにコスト(Cost)です。
おっと、いきなりLCTのCが登場しましたが、これがなかなかの曲者なのです。
Peopleの観点からするとコストは小さいほどベター、つまり同じ機能や性能の製品ならコスト(価格)は安いほうが良い、というのが普通の考え方だと思います。
でも、それは消費(購入)する側の見方であって、製造(販売)する側、あるいは社会全体から見ると(言い換えれば、Prosperityの観点で評価すると)必ずしもそうではありません。
同じ製品なら高く売れたほうが製造者にとって好ましいでしょうし、経済の活性化という面ではより大きな金銭が流通したほうが一般的には良いと考えられるからです。
このように、同じ製品であっても、コスト(Cost)はPeopleとProsperityとで全く異なる評価になる可能性があるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
とはいえ、LCTのCにはCostがバッチリはまります。

 さあ、いよいよ残るはTですが、これはもう明らかでしょう。
私たちは工学部ですから、教育と研究の目的は実社会の役に立つ科学技術を創造し、実用化し、普及させる、つまり本学の掲げる「実学主義」に集約されると思います。
そうです、最後のTはTechnology(技術)のT以外には考えられません。
サステイナブル社会を実現するためには、地球規模の課題を解決できる革新的な技術を開発し、身近な製品やサービスとして世界中に浸透させる必要があります。
したがって、誰が何と言おうとLCTのTはTechnologyでなくてはならないし、逆にそうでないと私たちの存在意義すら危うくなってくるように感じています。
極言すれば、LoadとCostの問題をTechnologyで解決するのがサステイナブル工学の本質である!と断じても良いぐらいです(って、やっぱり言い過ぎかなぁ・・)。
いずれにしても、LCTのTはTechnologyで間違いないですね。

Lct_3

 というわけで、SustainabilityのLCTもなんとか収まり、感動の結末となりました。
LCAに始まり、環境効率、そしてSustainabilityに関して、途中2回の番外編を折り込みながら「サステイナブル工学三部作」として随分与太話を続けてしまいましたが、東京工科大学が進めている新しい工学「サステイナブル工学」の内容について少しでもお伝えできていれば望外の喜びです。
 ではみなさん、次回はまた何か新しい趣向でお目にかかれるよう無い知恵を絞りたいと思いますので、それまで楽しみに待っていて下さいね。

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