電磁気学は私達の生活を豊かにする
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みなさん、こんにちは。材料グリーンプロセス研究室の古井です。前回までのブログでは機械創造基礎というグループワーク型のPBLをモチーフにして、ものづくりの楽しさをお話ししました。今回はガラリと話題を変えて、古井が1年生後期に担当している基礎科目「電磁気学」について、思いつくままに述べてみたいと思っています。よろしくお付き合い下さいね。
みなさんは高校の物理で、物体の運動,熱とエネルギー,電気と磁気,波動,原子と原子核を勉強されていることと思います。それらの中で「電気と磁気」はお好きですか!? 高校の電気と磁気がベースとなる大学の電磁気学は重要な基礎科目に位置づけられる一方で、力学などと比較すると、その内容がかなり抽象的なため難解な科目とされています。事実、大学で使う電磁気学の教科書は、微分・積分やベクトルを駆使しつつ、電気・磁気の相互作用に関する原理・法則の方程式を展開することに趣を置いた内容です。しかも、電界や磁界,電位のような目に見えない抽象概念を扱いますので、雲をつかむように、ただひたすら問題を解くだけであまりおもしろくないと言われるのはわからない訳ではありません。
その一方で電磁気学は、私達の生活を豊かにする、とても大事な学問であることも事実です。例えば、みなさんが毎日使っているスマートフォンの充電。図1にあるように、充電器とスマートフォンの中にあるコイルを貫く磁束を介して電力を伝送しています。電流と磁界との相互作用、つまりみなさんが高校の物理で勉強した現象「電流によって発生する磁界」と「磁束の変化によって発生する誘導起電力」がものづくりにしっかり活かされている訳です。1831年に電磁誘導を発見したファラデーさんも、180年後になってこのような形で広く応用されるとは思っていなかったはずです。
図1 ワイヤレス給電技術によるスマートフォンの充電
(http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1112/12/news120.html)
発電所から家庭まで電気が送られてくる過程で、大事な中継役となるのが図2に示す変圧器(トランス)です。これもまた電磁誘導による誘導起電力の原理を利用して、電圧と電流を変換しています。みなさんも電信柱の上にある大きなボックス(柱上変圧器)をご覧になったことがあるでしょう。市街地から離れた発電所で発電される27万5000から50万ボルトもの高電圧の交流電流は、変電所で段階的に電圧を下げながら工場やビルで使われて、最終的に私達の家に届くときには100から200ボルトに減圧されています。変圧器の動作原理は
の式で説明することができます。これは、コイルに生じる誘導起電力V は磁束Φ の時間変化に比例するという、みなさんの物理の教科書にも必ず載っている関係です。シンプルな式であるからこそ、変圧器に応用されて世界中いたるところで使われるようになったのです。まさにSimple is Bestです。
図2 発電所から家庭まで電気が送られる過程
(http://www.yoshikawa-elex.co.jp/abouttrans/)
古井の電磁気学では、電磁現象の概念や法則を理解し、それが私達の生活や工学にどのように応用されているかに主眼を置いて講義を展開しています。思いがけず古井の専門分野である材料に脱線してしまうこともありますが、例えば導体,半導体,絶縁体のような材料の物性や特性は、それらを構成する原子の電磁気的なふるまいに依存することを強調します。つまり、ものの本質をものづくりへ活かすためには、電磁気学のような基礎学問もまた大事なんですね。「基礎なくして応用なし」,「原理・原則なくして実用なし」です。
これからの機械エンジニアは機械の知識はもちろんのこと、電気電子や応用化学の原理・原則を融合して、マルチなステージのものづくりができなければなりません。東京工科大学工学部では、学科横断型のカリキュラムなどを用意して、機械・電気電子・応用化学の垣根を超えた学問をのびのび学べるシステムが整備されています。そうした新しいタイプのものづくりに興味をお持ちの方はぜひ一度、八王子キャンパスへいらして下さい。お待ちしています。
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