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新々シリーズ:Sustainabilityの密室に君は何を発見するだろうか【第2回】

| 投稿者: 機械工学科

みなさん、こんにちは。サステイナブルマネジメント研究室芝池です。
今シリーズでは「Sustainability」を取り上げていますが、前回はSustainabilityの「3つのP」、すなわち、Planet、People、Prosperityについて説明している間に、なぜか推理小説に潜んでいる「3匹のダニ」に話が飛躍してしまいました。
今回は、お叱りを覚悟の上で、ひとまずこの続きから始めたいと思います。

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 さて、推理小説に潜むダニとは、① Who done it?(フゥダニ、誰が犯人か)、② Why done it?(ホワィダニ、事件を起こした動機は何か)、③ How done it?(ハゥダニ、どうやって事件を起こしたのか)の3匹でしたね。
 まず①は、いわゆる本格派推理の王道であり、芝居がかった探偵小説などでは最後に「犯人はお前だ!」的な見せ場が必ずと言っていいほど設定されていて、ファンにとってはお約束の緊迫感と意外性に満ちた感動のフィナーレを提供してくれます。
 続いて②は、S.M.氏の社会派推理や最近のK.H.氏の下町人情劇ではお馴染みの真相究明プロセスですが、謎(トリック)とは直接関係のない場合もあって、これに偏り過ぎると推理ゲームを楽しもうとする読者にはやや物足りない面があるかもしれません。
 そして最後の③は、これこそ推理小説の真髄だと断じる作家もいる(H.M.氏は③が優れていれば②なんかどうでもいいみたいな発言をされたとの噂もありますが、本当かな?)とかで、かくいう私も実はこの③が読んでいて一番楽しめるように思うのです。

 というわけで、③のハゥダニについてもう少しだけお話をさせて下さい。
 ここでは、アリバイ崩し、密室の解明、犯行の方法や道具の推定といったところが中心的な話題になるわけですが、なかでもこの「密室」という言葉の響きには、何とも言えないExcitingでFantasticな興趣が私には感じられてならないのです。
 現実ではあり得ない物語の中だけの世界、でも作者と読者の知恵比べ風の、ある意味破天荒な論理が許される特別な時空間を共有するかのような、とても不思議な感覚です。
 密室とは、外部と通じているすべてのドアや窓に内側から施錠された、被害者以外には事件の前後に出入りできない(はずの)部屋や建築物の総称ですが、雪に閉ざされ周囲に足跡がない山荘や、時速300kmで疾走する列車、運行中の飛行機や船の中などで事件が起きたのに、なぜか犯人らしき人物が現場周辺に見当たらない場合も含まれます。
 しかし、事件が起きた以上は被害者の自作自演でない限り必ず犯人が存在するはずですから、この極めて困難な謎解きに探偵役が心血を注ぐところに浮世離れしたドラマが展開され、しばし空想世界に身を委ねながら読書の醍醐味に浸ってしまうわけです。
 そして、絶対に不可能と思われた密室での犯行がついに解明された時、そのトリックの大胆さや斬新さ(つまり破天荒さ!)に舌を巻く、あの一瞬がたまらないのですよね。
 でも、密室トリックのアイデアなんて出尽くしたようにも思われるのに、現在でも次々と奇想天外な新作が生まれている事実には、今さらながら作家の方の努力に敬意を表したいと思います。

 といったところで、そろそろSustainabilityにも登場してもらいましょう。
 実は、Sustainabilityと密室の間にはあっと驚く共通点があるという事実を最近発見してしまったのですが、さてみなさん、この共通点とはいったい何だと思いますか?
 ずいぶん唐突な質問ですので、ヒントを出しますね。
 製品等の環境への影響を評価するときには、使用している時のような目の前の状況だけではなく評価対象のライフサイクル全体(資源の採掘から使用後の廃棄まで)を考慮する必要があり、その具体的な手法がLCA(Life Cycle Assessment)であるというお話を以前のシリーズで何度かしました。
この基本となっている考え方を、国際標準規格等では一般に「ライフサイクル思考(Life Cycle Thinking)」、略してLCTと呼んでいます。
つまり、LCAはLCTを実践するためのマネジメントツールなのです。
したがって、LCAを重要なツールと位置付けているSustainabilityの評価においてもLCTが当然基本になるのですが、なんとこのLCTは密室の解明にとっても不可欠な要素だった、というのがヒントです。

 ならばこの要素とは何なのか・・・、というところで今回は残念ながら終了です。
 解答は次回までの宿題にしたいと思いますので、もし時間がありましたら、気分転換に一度考えてみてください。

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