機械の共通言語
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こんにちは。材料グリーンプロセス研究室の古井です。高校生のみなさんは、この冬休みも楽しい充実した毎日をお過ごしのことと思います。これから冬本番を迎えますが、くれぐれもカゼをひかないようにして下さいね。
東京工科大学工学部機械工学科では、他の大学にはない独自のものづくり科目として、作図(ドローイング)をメインにすえたグループワーク「機械創造基礎」を開講しています。前回のブログではそのコンセプトと共に、機械のものづくりはドローイングから始まることを説明しました。ここではドローイング・コミュニケーションをキーワードとして、グループでものづくりを進める大切さをお話ししたいと思っています。どうぞお付き合い下さいね。
シンガーソングライター高橋優さんの曲「福笑い」にはこんなフレーズがあります。「きっとこの世界の共通言語は 英語じゃなくて 笑顔だと思う」 かれこれ10数年前、古井は駅前留学などの準備をしないで、いきなりアメリカ・ロサンゼルスでの留学をスタートさせました。南カリフォルニア大学での研究活動は、テクニカルタームをつなぎ合わせた、たどたどしい英語で何とかクリアしたのですが、問題はアパートの契約や銀行の口座を作る時。そういう難関は必ず満面の「笑顔」で乗り切りました。笑顔が表現する楽しい・うれしい感情には、問題を解決しやすくしたり、記憶力や集中力を高める効果があるそうです。笑顔は人種・性別・年齢を超えたコミュニケーションの潤滑油。まさに「笑う門には 福来たる」です。だからと言って、高校生のみなさんが英語を勉強しなくてもいいって訳ではないですからね。
機械工学を基礎とするものづくりの現場では、どんどん分業化が進んでいます。年を追って高度化・複雑化するものづくりに対応するため、図1にあるような流れで、大勢のエンジニアが共働してひとつのものを創り上げてゆきます。また、技術革新のスピードが速まり、製品のライフサイクルが短くなっている現在では、図2のように設計開発・部品製造・組立を複数の企業が受け持つ水平分業のバリューチェーン化によって、付加価値の高いものづくりへとシフトしています。みなさんもご存知のように、日本の製造業は世界諸国との国際分業に活路を見出さざるを得ないので、文化・歴史や言葉の壁を乗り越える「ものづくりの共通言語」がとても大事になってくるんです。エンジニアの発想やアイデアの多くは形を持っています。それらの形を正確に保存し、時間が経過しても変化しない情報として活用するためには、形をそのまま図にすることが求められます。つまり、発想やアイデアをきちんとドローイングして可視化し、それをツールとしてディスカッションすることによって初めて、ものづくりという具現化がスタートするんですよね。
機械工学科の機械創造基礎では、矩形や円などの平面図形,直方体や球といった基本的な立体をフリーハンドで描く手法を学んだ後、それらの組み合わせから成る機械部品を素早く正確に描く演習を行います。さらに、その図面をグループのメンバーに渡し、作図者の意図を具体的・定量的に伝えて作図者と作製者の間でコンセンサスを積み上げながら、最後には作製者が紙で模型を作り上げます。言ってみれば、作図者と作製者が図面を介してコミュニケーションしつつ創造性を高め合い、さらに新しいアイデアや価値を生み出してゆく共創作業です。この「自分が描いて他の人が作る」演習では、発想やアイデア,イメージのような形のないものを図面で伝えるためには何が必要か、また実際にものづくりするためには図面から何を読み取らなければならないのかを体得します。
ものづくりは一人よりも仲間と一緒に行う方が楽しいし、いいものができます。まさに「三人寄れば文殊の知恵」。この機械創造基礎では、ものの価値の「目に見える化」として、グループでドローイング・作製したものの性能や特徴をコンテスト形式で競い合います。グループのために、より高いスコアを狙って目をキラキラさせながらものづくりに取り組む学生諸君はとても楽しそうです。次回のブログでは身近にある素材を用いたものづくりで、大きく・美しく,高く・強くなどの条件をいかにクリアするかを競うコンテストについてご紹介しますね。またお目にかかりましょう。
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