機械のものづくりは「描く」ことから始まります
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こんにちは。材料グリーンプロセス研究室の古井です。高校生のみなさんは、楽しく・充実した夏休みをお過ごしのことと思います。3年生の方にとっては、大学受験に向けた「勝負の夏」。体調管理に気を付けて、しっかりがんばって下さい!
東京工科大学工学部機械工学科には最新鋭の機械工学カリキュラムがあります。その特徴は、ものづくりをアクティブに体験しながら、機械工学の基礎理論や技術,考え方を身に付けられることです。ここでは機械工学科の学びの中でも、ものづくりの体験・実感にフォーカスしたグループワーク「機械創造基礎」をご紹介しましょう。数回に分けた連載で、機械創造基礎の楽しさ・おもしろさを少しずつ説明してゆきますので、よろしくお付き合い下さいね。
みなさんは朝起きて最初に何をしますか? 顔を洗う,水を飲む,テレビを見る,イマドキの高校生のみなさんでしたら、やはりLINEやFacebookなどのSNSをチェックされるのでしょうか。いまだにガラケーの超アナログ派である古井は、かれこれ10年ほどになりますが、その日にやることをメモ帳に書き出しています。寝ボケまなこをこすりながら書き始めるのですが、書き進めていくうちに不思議と頭がスッキリしてきて、一日のアウトラインが見えてきます。と同時に、やらなければならないことの優先順位やタイムスケジュールなどもはっきりします。このように書くことは、考えていること,思っていることを記録・保存したり、物事の流れを確認するのにもってこいの作業なんです。
書く(write)と同じ発音の日本語に「描く(draw)」がありますよね。この「描く」にも書くと同じように、物事を表現したり,伝えたり,保存したりする機能があります。特に機械を設計・開発したり、機械を使ってものづくりを行う機械技術者にとって、イメージやアイデア,ひらめきのような形のないものを、リアルなもの・形あるものとして表現する,伝える,保存することは、ものづくりの良し悪しを大きく左右する、いわばものづくりの源流のようなものです。つまり、エンジニアの発想は特許や学会発表につながるような貴重な財産であると同時に重要な情報であるからこそ、「描く(ドローイング)」というプロセスを経て、ものづくりへとつなげてゆかなければならないんですね。
みなさんは小さい子供が描いたお父さんやお母さんの絵にハッとさせられることありませんか!? 素直に描いた絵には、大好きなお父さんやお母さんの特徴や、ふとした表情がのびのび描かれていて、見る者を引きつける魅力があります。その反面、古井のようなおじさんが描く絵には、長い人生の中で固定された先入観があふれているし、小手先のテクニックでちょっとでもうまく見せようとする邪念が入ってしまいます。つまり、見ているものを見ているまま忠実に描くのは案外難しいんですよね。発想やアイデアのように、形のないものはなおさらです。
そこで機械工学科に入学したての1年生前期に開講される機械創造基礎では、まず「見ているものを見ているままに」「見ているものをそれらしく」をコンセプトとしたドローイングの基礎からスタートします。定規を使わないで直線を直線らしく引くことから始まって、矩形や円などの平面図形、直方体や球といった基本的な立体をフリーハンドで描く手法を学びます。そうした中で、ものとそれを描く人との間にある位置関係(方向・高さ・距離)がものの見える形を決めていることに気付きます。難しい言葉で言うと、空間認識ということになるでしょうか。また立体をより立方らしく、より自然な形として3次元的に描くための表現方法を学習します。立体がきちんと描けるようになったら、それらの組み合わせから成る機械製品、例えば直方体と円柱から構成されるテープカッターを素早く的確に描く演習を行います。この機械創造基礎では以下のようなステップを経て、ドローイングのスキルを修得してゆきます。
機械のエンジニアは図面を描いて、ものを表現したり,記録・保存したら終わりではないんです。もうひとつ大事な「伝える」という作業があります。次回のブログでは描いた図面を介して、意志を通い合わせながらコンセンサスを積み上げて、グループでものづくりを進める大切さについて、「ドローイング・コミュニケーション」をキーワードとしてお話ししたいと思っています。またお目に掛かりましょう。
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