エコデザインからサステイナブルマネジメントへ
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みなさん、こんにちは。サステイナブルマネジメント研究室の芝池です。
今回は、おなじみの百人一首シリーズにはお休みを戴いて、当研究室のテーマである「サステイナブルマネジメント」について少しお話ししたいと思います。
産声を上げたばかりの研究室なので、まだこれからみんなで議論しながらコンセプトを練り上げて行こうという段階ですが、まずは意気込みを聞いていただきましょう。
東京工科大学の工学部に入学すると、学科に関わらず学部生全員がLCA(ライフサイクルアセスメント)を学ぶようにカリキュラムが構成されています。
LCAとは、以前にも説明したように、工業製品などのライフサイクルの各段階における環境負荷を定量化し、さまざまな環境への影響を科学的に評価する手法でしたね。
サステイナブル社会(持続的発展を遂げる社会)の実現に貢献する技術や製品を創出するのがサステイナブル工学の目標であり、LCAはその目標達成のために必要不可欠な基盤技術である、という理解に立ち、工学部の必修科目として位置づけているわけです。
このLCAの直接的な用途の一つに「エコデザイン」があります。
「エコデザイン」とはその名の通り、環境に配慮した設計(あるいは、もう少し広く製品開発と解釈しても良いと思います)を意味しています。
燃費の良いハイブリッド自動車や排気ガスの出ない電気自動車(最近では燃料電池自動車も現れました)、オゾン層を破壊しないノンフロン冷蔵庫や寿命が長く消費電力が少ないLED電球など、私たちのまわりには「エコデザイン」によって生み出された商品がたくさんありますし、プラスチックのリサイクルなどもかなり進んできているようです。
こうした環境配慮型の製品はみな素晴らしい技術を用いて作られており、また、日本が開発競争の最先端を走っている場合が多く、今後の展開に期待がふくらむ分野ですね。
そして、「サステイナブルマネジメント」とはこの「エコデザイン」をさらに進化させた新しい概念、未来への道標なのです。
「エコデザイン」は製品が環境に与える負荷の低減をめざしますが、「サステイナブルマネジメント」では、サステイナブル社会の実現に向け、環境負荷の低減と同時に製品が個人の生活や社会、経済にもたらす価値の増大をもめざしています。
価値には多様な面があり、対象となる人の立場によって同じ製品から異なる価値を見出す場合が多く、また価値の評価もそれぞれ違ってくるのが一般的です。
例えば、全く同じ性能のパソコンが何種類かある場合、私にとってはなるべく安い製品が有難いわけですが、製造者や小売業者には高ければ高いほど、正しくは利益が大きいほど嬉しいはずですし、投資家に対してはまた別の評価基準がありそうです。(消費者の中にはデザインやメーカーなど、価格以外の要素を重視する方も多いでしょうね。)
したがって、このように多様な「製品の価値」を技術や製品の研究開発に的確に反映するには何をどのように評価、改善すればいいのか、この命題へのチャレンジがサステイナブル社会実現の要、すなわちサステイナブル工学の機軸になると私は考えています。
そこで、価値の評価分析に関する理論や方法論の構築、さらにはツールの開発を通じてこれからのエンジニアを支援していきたいと考え、機械工学科にサステイナブルマネジメント研究室を立ち上げました。
今はまだ工学部の出身者はいませんので、研究室のメンバーはまずLCAを学修し、製品の環境影響評価手法をしっかりとマスターするところからスタートしています。
今後は、各人の希望や適性に合わせて生活、社会、経済等に対する製品価値の評価指標開発と定量化、さらには環境影響評価指標との統合化に取り組み、具体的な開発設計プロセスへの組込み方法について研究を進める予定です。
みなさん、人類の輝かしい未来を創造するため、私と一緒に東京工科大学で「サステイナブルマネジメント」を追究してみませんか?
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